山下拓也
Prize
林直樹 賞
1985 三重県生まれ
2013 京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了
展示空間や素材の条件を巧みに利用しながら、巨大なマスコットや脈絡のないキャラクターをモチーフとする大掛かりなインスタレーションを制作することで、山下拓也はユーモラスかつ禍々しい独自の世界観を提示している。山下の作品では、過去のオリンピックや解散したサッカーチームなどの使われなくなったマスコットが、「彫刻」として現実世界に呼び戻されるが、それらはいずれも紙やベニヤ板などの薄っぺらな素材によって、自らの不完全で弱々しい実体をさらけだしている。主な展覧会に「museum〆an」中村キース・ヘリング美術館(2014、山梨)、「TALIONの子」TALION GALLERY(2014、東京)、「ヨコハマトリエンナーレ2014 創造界隈拠点プログラム / 東アジアの夢 BankART life4」BankART studio NYK(2014、横浜)、「あいちトリエンナーレ2013」長者町会場、本町会場(2013、愛知)などがある。
私の制作は、場を観察することから始まります。観察することで発見した場のほころびを利用し、その場に対し何の脈略も無い存在である"やつら"を出現させるような感覚があります。私が言う"やつら"とは、消滅したサッカーチームのマスコット、過去のオリンピックのマスコットをはじめ、流れ行く時代のなかで活動の場を失った様々なものたちです。それはまるで、魔法使いが魔法陣を描き、そこから幻獣達を召還するような行為なのかもしれません。私たちのいる場所、つまり、まさにそれが出現される場である"こちら"に対し"あちら"の存在であるやつら"を生み出すことが、私にとって今とても重要なことなのです。半ば強引に行われるその行為は、現代美術シーンの流行に左右されてしまうことへの強い抵抗感の表れなのかもしれません。