大坂恵一 賞
Selector
大坂恵一
団体職員
Prize
松延総司
Prize Statement
松延総司 「Nissed」トイレットペーパー
物質自体には輪郭線はない。しかし私たちは物質を他の空間や他の物質と区別するために、あたかも輪郭線があるかのごとく認識している。しかし、それは見る位置によって現れたり消えたり移動したりする。そのことで3次元であることを認識しているのであるが、この作品は、3次元の物質に輪郭線を描くことによって、私たちは、物質の有り様よりも、どの位置から見ても変わらない形が強調されて認識させられることになる。これは、周囲の空間が地となり、この物質が図となることで、あたかも2次元のごとく感じられるようになるのである。単に線を引くだけで、鮮やかに3次元と2次元を往来し得たことに感嘆した。これは、私たちの目は物質をどのように認識しているのかということに繋がるのではないかと感じた。
トイレットペーパーは紙であるので、本来限りなく2次元に近い物質である。しかし、巻いてあることで、我々は3次元として容易に認識している。それをまた、2次元に戻したかのように見せる遊び心も面白かった。
Selector Profile
横浜市内の社会福祉法人に勤務しています。仕事のかたわら、週末に美術館やギャラリーに足を運ぶようになったのは、20年ほど前。初めて現代アート作品を購入したのもその頃でした。それ以来、斬新で刺激的な表現や、現代社会や人間の内面をリアルに捉えたような作品を求めて、細々とコレクションを続けています。