特別賞・小金沢智

特別賞・小金沢智 賞

Selector

小金沢智
日本近現代美術史 研究者

Silver Prize

伊東宣明

Prize Statement
私の賞には、「特別賞」とついているため、なんだろう? と思われた方も多いのではないかと思います。そもそもあなたは誰か? ということから説明すれば、私は日本近代美術史を専門とする研究者です。そして、この賞は作品の購入ではなく、作家論・作品論の執筆によってプライズとするというものです。「コレクターズ・プライズ」という名称のついた"新しいコレクター像"の提案を掲げる「アートフェア」で、「購入」を「評論」で代替するというのはいかがなものか、という「コレクター」の方々からのご意見もあることでしょう。ただ、「アートフェア」というマーケットの場に、「評論」という要素をインストールすることも、プライズの枠組の拡張と来場者層の拡大という点から見れば、多少は意義があるかもしれません。また、そもそも普段、評論や研究に軸足を置く立場からすると、購入をもって作品評価の意思を表明するということが難しく、主催者の方々と相談してこのようなかたちで参加させていただくことになりました。
さて、そうして私がプライズをお贈りした伊東宣明さんの作品は、自らの心臓部分に聴診器をあてたヌードの男性が、延々とただただ肉を叩いているという10分弱の映像作品です。心臓の鼓動と、肉を叩くリズムは同期しているのでしょうか? わかりません。湖畔らしき場所を背景に、ヌードの男性が肉を叩いているというイメージは、私にいくつもの「?」を浮かばせながら、しかし一方で非常に切実なものを抱かせるものでもありました。後日、これとは別の長文をもってして、この作品について考えたことの評論を執筆します。アートフェアのウェブサイトにアップされる予定ですので、今しばらくお待ちください。

Selector Profile
1982年、群馬県生まれ。2008年、明治学院大学大学院文学研究科芸術学専攻博士前期課程修了。2010年7月より2015年3月まで世田谷美術館非常勤学芸員、2012年5月より武蔵野美術大学造形学部通信過程非常勤講師。日本近現代美術史を専門とし、展覧会や執筆を通して、美術史と現在の表現との接点と接続の可能性を探っている。『諏訪敦 絵画作品集 どうせなにもみえない』(求龍堂、2011 年7月)、『月刊ギャラリー』「評論の眼」(2010 年11 月号~2014年12月)連載など、現代作家についての文章をカタログや雑誌に多数執筆。2015年4月7日から12日まで、The Artcomplex Center of Tokyoで開催されるギグメンタ2015「日本画のハードコア」展企画。

撮影:妻木良三