酒井一有／Ichiyu Sakai

酒井一有

1982年鎌倉生まれ
2006年多摩美術大学大学院美術研究科博士前期（修士）課程芸術学専攻修了

2013年「水源地の芸術-Direct Access Method-」神奈川県立相模湖交流センター、神奈川
2014年「疑存島- 他者なき世界の地図作成法-」gallery COEXIST-TOKYO 、東京（構想計画所として）
2015年「引込線2015」旧所沢市立第２学校給食センター、埼玉（構想計画所として）
2015年「第18回岡本太郎現代芸術賞展」川崎市岡本太郎美術館、神奈川（構想計画所として）
2016年「また起きてから書きます」アキバタマビ21、東京

ハーゲンダッツに通いはじめて十年が経とうとしていた。私は叔母の家に出入りしており、同じように出入りしていた男から聞かされたのだ。
ハーゲンダッツは人々の暮らす一角で、ライトに照らされていた。弟にやった金のネックレスが光って揺れて、音をたてていた。弟は凶弾に倒れ、私は滝のように涙を流した。
バスにすこし乗る。そうやって移動する。叔母は、その場所を知らない。彼女もやがて知るのだろうか。穿いてきたズボンの紐が、緩んでいた。ズボンはナイロン製で、それは午後の光を受けて、透けてみえるくらいに薄い。
駐車場では、皆の顔だけが浮かび上がっていた。