作家推薦者

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後小路 雅弘 / Ushiroshoji Masahiro

九州大学大学院人文科学研究院教授

推薦作家

   

アートの中核にあるものは、売り買いできないとわたしは信じている。愛がお金で買えないように、だ。だからだろうか、アートフェアの推薦を依頼され引き受けるときに若干の躊躇を感じたのは。もちろん、アーティストの作品は売れるべきだし、売るためのシステムが必要なことは言うまでもないのだが。そこでわたしは、できるだけ売れそうもない作品を作るアーティストを推薦することにした。また、わたしはずっと福岡で生きてきたので、九州という地を拠点にしている(してきた)アーティストを選びたいと考えた。さらに、わたしは、長いこと美術に関わる仕事をしてきて、大きくて力強く、圧倒的で、感動的な、いわば美術のマッチョでエラソーなありかたに疲れてもいるので、ここは、むしろささやかで、ありふれた、ときに貧相にも見えるような作品を応援したいと考えた。そしてわたしは、美術というものは、深いところで、生きることを励まし、勇気づけるものだと思っているので、そのような作品を作るひとを選びたいと思った。そんなふうにこの三人を選びました。

後小路 雅弘

1978年福岡市美術館学芸員となり、「アジア美術展」を始め、「美術前線北上中─東南アジアのニューアート」(1992年)「東南アジア─近代美術の誕生」展(1997年)など、アジアの近現代美術の紹介に取り組んだ。1999年には学芸課長として福岡アジア美術館の設立に尽力し「第1回福岡アジア美術トリエンナーレ」を手掛けた。2002年より九州大学へ移り、アジアの近現代美術を研究するかたわら、モンゴル近代絵画展(2002年)、ベトナム近代絵画展(2005年)などのキュレーションに関わった。