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黒宮 菜菜 / Nana Kuromiya

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船に乗る

Photo by Kai MAETANI

※写真は参考作品です。

永峯修人の肖像

※写真は参考作品です。

その夢の始まりにさらに別の恐怖もあった。女全員が歌わなければならなかった!彼女たちの身体が同じで、同じように無価値であり 、また心のこもっていない単なる響きのメカニズムであるにもかかわらず、女どもはそれを喜んだ!それは魂なき者たちの嬉しい連帯であった。女たちは 心の負担、このおかしな誇り、個体であるという幻想をかなぐり捨て、誰もが同じであることに幸福を感じていた。

Photo by Katsuhiko Sasaoka, ©Gallery Nomart

※写真は参考作品です。

うとうとしてしまったのか、目を開けると空が白んでいた。ふと見ると恋人が目の前に立っている。立ったまま揚げ茄子をむしゃむしゃ食べている。恋人は思ったほど変化していなかった。全身がすっかり毛におおわれ、背中に羽のようなものをたたんでいるのが、変化といえば変化か。 顔つきなどは昔とそっくりそのままだった。

Photo by Katsuhiko Sasaoka, ©Gallery Nomart

※写真は参考作品です。

作家情報

黒宮 菜菜

黒宮 菜菜

1980年 東京生まれ
2015年 京都市立芸術大学・博士(芸術学)学位を取得
2010年「黒宮菜菜展-流彩の幻景-」、INAXギャラリー2、東京
2016年「黒宮菜菜展 夜—朧げな際」、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都
2017年「のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ」、京都芸術センター、京都
2018年「第21回岡本太郎現代芸術賞」、川崎市岡本太郎美術館、神奈川
2018年「黒宮菜菜 : うつつ」、ギャラリーノマル、大阪

「滲み」や「暈かし」といった描写痕跡を不鮮明にする絵画技法を用いて、さまざまなモチーフの絵を描く。画面は、陶器の釉薬を思わせるような透明な艶と、写真のように滑らかな色彩を有する。このような独特なテクスチャーを有する絵を模索しながら、近年では、画仙紙や水墨画用紙といった和紙素材にも着目し、染料を描画材としながら特徴的なマチエールの絵を制作する。

推薦者

出原 均

兵庫県立美術館学芸員

[推薦者コメント]

黒宮は油彩画と、紙にインクの作品を制作しているが、ここではとくに後者を挙げておこう。彼女は、インクを水でにじませることで、色を分解しながらイメージを作り上げていく。光をプリズムで分解するのにも似て、分解された藍、赤、黄の3色は澄んだ輝きを湛える。その画面は鏡ないし周りを映し込む水面のようである。この鏡面のイメージを高めるのが、紙を2枚重ねあわせてにじませる方法で、イメージは左右ないし天地において相称となす。万華鏡である。鏡が絵画の始原のひとつとするならば、黒宮の絵画は、その比喩そのものを体現するかのような絵画だ。