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福住 廉 / Ren Fukuzumi

美術評論家

推薦作家

   

美術評論家にとっていちばん厄介なのは、「どういう基準で批評しているのか」という質問です。なぜなら、この問いはトートロジー以外の何物でもないからです。美術批評は、つねにすでに、基準の提示であり、批評そのものが基準であると言ってもいい。批評から基準を切り離すことはできないし、あまつさえ批評は基準という理念の現われでもないのです。特定の様式や運動が支配的だった時代であれば、そのような明快な基準を要約することもできたかもしれません。ただ、現在のように「美術」の輪郭があいまいで、なおかつそれぞれの趣味性が個別に自立している状況では、特定の基準が普遍的な力を発揮することは到底期待できないでしょう。しかし裏を返せば、特定の基準に呪縛されることなく、思う存分表現を実現できる点で、美術家にとってはある意味で幸福な時代とも言えます。今回、わたしが推薦した3人の美術家は、いずれも女性ですが、そこに特別な意味はありません。それぞれの特質はそれぞれ固有のものですから、それぞれの推薦文をご一読ください。

福住 廉

1975年生まれ。著書に『今日の限界芸術』(BankART 1929、2008)、共著に『日本美術全集第19巻拡張する戦後美術』(小学館、2015)、『どうぶつのことば』(羽鳥書店、2016)ほか多数。企画展に『21世紀の限界芸術論』(ギャラリーマキ、2005〜2011)、『今日の限界芸術百選』(まつだい「農舞台』ギャラリー、2015)ほか多数。現在、東京藝術大学大学院、女子美術大学、多摩美術大学、横浜市立大学非常勤講師。「共同通信」で毎月展評を連載しているほか、ウェブサイト(https://note.mu/fukuzumiren)でもレビューを発表している。

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