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笠原 美智子 / Michiko Kasahara

石橋財団ブリヂストン美術館副館長

推薦作家

   

今回は、まったくの新人というよりも、すでにある程度アーティストとしてのキャリアを築いて評価が高く、世界に打って出ようとしているアーティストを選んだ。主題は各人様々だが、既存の価値観やあり方、枠組みなどに違和感を抱き、自分の足下から立ち上げた主題を、それがどのようにして成り立っているのか、そして現代ではどのような意味があるのかを、歴史を学び、周囲を調査し、謙虚に、そして軽やかに、新たな表現を提示していることが共通している。彼女・彼が向き合っている主題は、家族、民族、世代、セクシュアリティ、障害、アイデンティティ、記憶、歴史等々、現代を生きる誰もが考えざるを得ないテーマである。あまりにも複雑で厄介な問題を含むので、多くは避けて通る題材かもしれない。彼らのもうひとつの共通点は、そうした困難な主題に対して、簡単に単純化し一般化して結論を出さないこと。複雑さや困難さと四つに渡り合っていることでもある。

笠原 美智子

1957年長野県生まれ。1983年明治学院大学社会学部社会学科卒業。1987年シカゴ・コロンビア大学修士課程修了(写真専攻)。主な著作に『ジェンダー写真論 1991 - 2017』(里山社、2017)、『写真、時代に抗するもの』(青弓社、2002)『ヌードのポリティクス 女性写真家の仕事』(1998、筑摩書房)、他。主な展覧会として、「わたしという未知へ向かって 現代女性セルフ・ポートレイト」展 (1991) 、「ジェンダー 記憶の淵から」展(1996)、「ラヴズ・ボディ ヌード写真の近現代」展(1998)、「ラヴズ・ボディ 生と性を巡る表現」展(2010)、「日本の新進作家vol. 11この世界とわたしのどこか」展(2012)、「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展(2017)、「愛について アジアン・コンテンポラリー」展(2018)他。第51回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展日本館コミッショナーとして「石内都:マザーズ 2000-2005 未来の刻印」展(2015年)を開催。
石橋財団ブリヂストン美術館副館長 (2018- ) 東京都写真美術館事業企画課長(2006 – 2018) 東京都現代美術館学芸員(2002 – 2006) 東京都写真美術館学芸員 (1989 – 2006)